3年ぶりに開催となった2022年「大垣まつり」を紹介

今回は岐阜県大垣市にて毎年5月開催となる「大垣まつり(2022年)」の紹介記事となります。

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2022年大垣まつり公式ポスター

 

はじめに

当ブログではすでに「大垣まつり」紹介記事を公開中ですが、本記事ではより簡潔に「大垣まつりの基本情報」、祭の主役となる「軕(やま)の種類」、「2022年5月に3年ぶり(縮小)開催の大垣まつり」をご紹介しています。

 

本記事掲載の写真について

本記事の次項目以降に掲載の2022年大垣まつり風景写真につきまして、その大部分を「たく@SYC 岐阜」様のご厚意により使用をさせていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

次項より「たく@SYC 岐阜」ご提供写真…※印なし、記事編集者撮影分…※あり

本記事内の全ての提供写真権利は撮影者様が保有しています。また本記事内容は編集者の全責任となります

 

「大垣まつり」とは

大垣八幡神社の例祭となる大垣まつりは、毎年5月15日までの15日に近い土曜・日曜に開催される、大垣市を代表することは勿論のこと、岐阜県内でも有数の規模と歴史を誇るイベントとなります。

大垣市街地中心にある大垣八幡神社(正式には八幡神社)の例祭となります。※f:id:nichinichisou0808:20220627035239j:image

大垣八幡神社は大垣市の総鎮守(大垣を守護する神を祀る代表)として、毎年5月に行われるのが大垣まつりなのです。※

そのため祭開催中は神社鳥居前での奉芸から神輿の渡御など、数々の重要な神事が執り行われます。※

2016年に「大垣まつりの軕(やま)行事」は国の重要無形民俗文化財に指定され、更に2017年には「山・鉾・屋台行事(やま・ほこ・やたいぎょうじ)」としてユネスコ無形文化遺産にも指定されたことにより、近年は益々の盛り上がりを見せています。

祭開催2日間の人出は30万人以上になることもあり、これは岐阜県の恒例年間イベントしては、観光客数ベスト5にも入ることもある程です。(参考:岐阜県統計 平成28-30年)

次項では大垣まつりの歴史と特色についてご紹介いたします。 

 

「大垣まつり」370年の伝統と特色

大垣における軕行事の始まりは1648年頃、当時は大垣10町による10輌軕を曳回していました。

1679年に大垣藩主戸田氏西公より「神楽軕」「大黒軕」「恵比須軕」の三両軕を賜り、総勢13輌となりましたが、その後天災などにより近年まで多くの軕が失われました。大垣城と初代藩主像

しかしながら長い期間をかけて軕の修復や復元などが行われた結果、2012年には70年振りに13輌の軕が揃い、そして現在に至ります。

藩士下賜の軕と町内の軕が併存する軕行事は、日本全国大垣だけかもしれません。

 

主役となる13輌の軕

現在、大垣まつりの軕(やま)は全13輌あります。その簡単な内訳は以下の通りです。

①大垣藩主より下賜された3輌

②大垣10か町が造った10輌f:id:nichinichisou0808:20220627035355j:image

十か町…本町、中町、新町、魚屋町、竹島町、俵町、船町、伝馬町、岐阜町、宮町

特に10か町の軕はその美しい意匠が特徴であり、一説によれば「各町は競い合う様に絢爛豪華な軕に仕上げていった」と記録ある程です。※f:id:nichinichisou0808:20220627040149j:image

さらに軕の特徴などにより「三両軕」「踊り軕」「からくり軕」の3種類に分かれています。これらは戦災で大部分が消失したものの、一部は焼失を免れた軕と新たに再建された軕により、平成24年には70年ぶりに13輌の軕が揃いました。

ここからは13輌の軕外観をご紹介します。(令和4年最新版)

 

■三両軕

前述の「藩主より下賜された3輌」が「三両軕」となります。各軕は市内3〜4の町で1輌を毎年の当番制にて管理・運用しています。逆にこの三両軕以外の10輌については、1輌ずつ決まった町内で管理をしています。

当番となる町は「三両軕」と町管理の軕を担当することになります。

神楽(かぐら)軕

本町・中町・新町の三町内が毎年交替で曳き、「お祓軕」として、常に行列の先頭を行きます。

からくり部…写真では見づらいですが、軕の中で操作する巫女と山伏人形が舞います。※f:id:nichinichisou0808:20220627031144j:image

大黒(だいこく)軕

魚屋町・竹島町・俵町の3町内が年々交替で曳き

からくり部

恵比須(えびす)軕

船町・伝馬町・岐阜町・宮町の4町内が年々交替で曳いています。

からくり部

 

■踊り軕

絢爛豪華な舞台では子供による踊りが披露されます。玉ノ井軕のパンフレットを頂戴しましたが、10近くの演目を、それぞれ10歳前後の子達が演じるようです。

玉の井(たまのい)軕

10か町「船町」担当の軕は1815年以降再建。

踊り舞台

松竹(しょうちく)軕

10か町「伝馬町」担当の軕は平成30年に107年ぶりの大改修。

踊り舞台。

■からくり軕

軕上部の舞台では軕ごとに様々なからくり人形が芸を行います。熟練の人形操作は素晴らしく、中には「からくり人形が文字を書く」など様々です。

相生(あいおい)軕

10か町「本町」担当の軕は平成8年再建。

からくり部

布袋(ほてい)軕

10か町「中町」担当の軕は平成24年再建。

からくり部

菅原(すがわら)軕

10か町「新町」担当の軕は大正3年再建。

からくり部

鯰(なまず)軕

10か町「魚屋町」担当の軕は1658年鯰山に改名。

からくり部

榊(さかき)軕

10か町「竹島町」担当の軕は明治維新頃建造(?)。

からくり部

浦嶋(うらしま)軕

10か町「俵町」担当の軕は平成24年再建。※

からくり部

愛宕(あたご)軕

10か町「岐阜町」担当の軕。

からくり部

猩々(しょうじょう)軕

10か町「宮町」担当の軕は平成13年再建。

からくり部。

記事執筆者の気になる一輌

大垣まつり13輌すべての軕が美しいのですが、今年は特に布袋軕に注目をしていました。というのもこちらが2019年大垣まつりの布袋軕外観です。

そして今年2022年…漆によるフル塗装バージョン(完成まであと一歩)となりました。

美しすぎます。ちなみに執筆者の普段の推し軕は浦嶋軕※。

 

2022年 大垣まつり当日

2022年の大垣まつりは縮小開催による特別編成でした。朝8:45より大垣八幡神社前にて13輌の軕による奉芸が行われ、11:00頃からは13輌の軕が列になっての特別縮小ルート巡回をしました。

奉芸が行われる八幡神社鳥居。例年は2日間で計4回行われますが、今年は朝の1回となります。※

奉迎前に神主とおそらくは10か町の方々による祈祷でしょうか。

この間神社付近の水門川北位置で奉迎を待つ13輌の軕。

8:45分より奉芸が開始~1番手は必ず神楽(かぐら)軕の決まりです。

からくりなどの奉芸を見るには、鳥居の内側からとなりますが、個人的には軕の後姿を眺めるのが好きです。

1町(軕)は約15分の奉芸を披露します。

からくりに合わせて生演奏であったり謡曲を披露します。

奉芸が終わると間髪入れずに巡回が始まります。民族大移動。

水門川「武者溜橋」を真南へと巡行する13輌の軕。

西大垣通りとの「市役所北」交差点を南進する軕。

動く軕の舞台で踊り続けます(市役所北交差)。

当時は大垣藩主前で行われた「掛芸披露」は、現代では大垣市役所前の大垣市長前で行われます。

しかしコロナ禍による影響から、新大垣市役所前での初掛芸披露は、来年以降となりそうです。※

市役所前〜郵便局前(もみじ通り)を東進してから、大垣市街地のメインストリートである駅通りを北上します。

例年であれば写真奥の大垣駅から、この撮影位置よりも遥か後ろまで屋台が並ぶのです。

大垣でも人気の和菓子店は大混雑。

駅通りの上下4車線に配置された13輌の軕は一旦停止となります。

玉ノ井軕では舞踊を披露。踊り軕は一際人気です。

駅通り「新大橋交差点」からは13輌の軕が一望できました。

精巧絢爛な軕細工や軕上での踊りを眺める人、軕を撮影しながら関係者の話に耳を傾ける人も。

郭町横断歩道付近で「お祭り男」立花寿圭六氏に出会う(担当軕は玉ノ井軕)※f:id:nichinichisou0808:20220627032342j:image

東外側交差点を曲がった13輌の軕は、大垣八幡神社まで戻ってからの解散(各町へと帰る)となります。※
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特別コースによる軕巡行が終わると今年の大垣まつりも終わり、大垣駅へと戻る観覧客。

大垣共立銀行本店横を通って俵町へと戻る浦嶋軕。

歩行者天国期限の13時にはゴミつ落ちていない日常風景へと戻りました。

大垣まつり開催日の大垣市役所や大垣城などには、市章をあしらった幕が掲示されます。※

 

近年の大垣まつり

2022年は大幅に規模を縮小しての開催となった大垣まつり。「神事としての伝統継承」がその目的でしたが、ここではコロナ以前(主に2017,18年)の大盛況の様子をご覧ください。

奉芸を待つ軕の列。f:id:nichinichisou0808:20220627034141j:image

駅通りを自由巡行する軕(試楽)f:id:nichinichisou0808:20220627034151j:image

駅通りと大垣八幡神社を結ぶ「文化通り」の日中。大垣まつりは屋台の数も500以上と東海随一。
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夜宮(夜の奉芸)は1番の盛り上がり。これは夜宮前の軕点灯時間(試楽)。
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大混雑の大垣駅。f:id:nichinichisou0808:20220627034216j:image

軕の飾り提灯や布(みずひき)は、昼と夜・試楽と本楽で付け替える軕もあります。f:id:nichinichisou0808:20220627034226j:image

夜宮(試楽)では軕の回転も頻繁に見られます。
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新大橋交差点から見る大垣駅。f:id:nichinichisou0808:20220627034208j:image2023年「大垣まつり」には、この賑わいが戻るといいですね。

 

最後に

「もう大垣まつりは見れんかも」

2020年の大垣まつり開催中止が決定した直後に考えました。そして2021年には絶望的となる2年連続の開催中止。

…今年の奉芸を観覧しながら込み上げるものがありました。

私は「観る人」なので関係者の苦労は知る由もありませんが、今年の大垣まつり成功は彼らの尽力によるものなのは間違いなさそうです。

 

今回は以上となります。